23.6.11

続・金星4巻

また飽き足らずにつらつらつらと書いています。9話の話も込で。ネタばれます。




この間授業で扱われた「くぐり戸」というH. G. Wellsによる短編に、金星の庭のモチーフになったような庭園が登場してるのを発見してしまいました。
この物語では主人公が5歳ごろに見つけた、とある扉の向こうの世界に魅せられる、というのが大筋なのですが、この扉の向こうにある庭園が、彗星やマリアたちが連れてこられた庭に少し似ているのです。

・花の生い茂る、手入れのされた「庭」のようであること(舗装された道あり)
・人に慣れた豹がいること
・女の子が現れること(ウェルズ:髪の長い、美しくてもしかすると金髪かもしれない少女→"fair"という言葉が使われている)
・噴水があること

まあ、共通点と言ってもこれくらいなのですが、何となく似てるような気がしてきはしないでしょうか。
偶然の一致とは、言えないような。
以前私が厚かましくも「ジョン・ダン氏ってあの詩人からとってますか」とお聞きしたところ「イエス」と答えて下さったこともあるので、これもひょっとすると…。



以下、気になる点。

・夏草の過去。
確か、「俺には帰る国はない」と言っていた、と誰かが回想していたと思います。そして、アルベルトは、「日本人ではないのかもしれない」と考えている。そして他の月氏メンバーと違い、「人一倍、心に澱を降り積もらせていくタイプ」に見えるという錆丸の意見。
日本人でなくて漢字が読めるとしたら、中国、韓国、ベトナム辺りでしょうか。ベトナムなら、フランスに併合されてるだろうからある意味「帰る国が無い」?でもどこかの国のバベルの一族/少数民族なのかなーとも。バベルの一族抹殺依頼に、強固に反対していたらしいですし。あとグラナダって日本の漢字無いですよね、多分。


・黒曜が辞めたってことは、砂鉄が繰り上がり一鎖になるってことなのかどうか。
もしや実質的に一鎖?


・灘陸佐が持ってこようとした情報とは、何だったのか。
バドル移動の話をするためだけに来たのではないはず…。○P的な何かで退場されてしまいましたが…。


・相変わらず正体不明の金星。
金星と言うと、もう荒川の橋の下の彼女しか思いつかなくて、そんな電波な感じの少女しか想像できないんですが…絶対違うでしょうね。
金星の「花婿」って、普通に夫って意味なんだろか、と、今更ながら思いました。それを言ってしまったら「この世の栄華」って具体的に何よ、というのも問題ですが。美しい踊り子とか宴とか、全部あのポスターを見た人の妄想ですものね!


・花婿候補の行く末について。
砂鉄は「花婿に選ばれるのはたった一人、二人とも生き残ることはあり得ない」なんて言ってますが、考えてみればアッディーン双子の片割れの弟の方、特急に乗って失踪した2年前からずっと生きてるんですよね。緑の多い場所で、金星に恋をしている、という夢をヤスミンが見ていて、それだからこそヤスミンも金星に嫉妬せずにはいられなかった訳ですし。
そう考えると、樹になった人たちはともかく、「消された」人たちはどうなったのでしょうね。その存在が本当に抹消されたのか、はたまた摩訶不思議パワーで瞬間移動なんかさせてるのか(そんな甘い…)



事実関係整理

月長石に殺された3人、単行本で名前が抹消されてましたね。
可哀想なので、メモしておきます。
レイフ・オールマルクス、32歳
クリストフ・チャン、29歳
ホセ・サムディオ、37歳
いずれも軍人。


さらに、それぞれ生存者の国籍が単行本に追加されていましたね。

・金星特急内の様子を整理。65ページよりところどころ追加しつつ抜粋。


先頭車両、機関部:黒バベルと白バベル(国籍不明)

2号車、月長石ことセトウチ・ヨウ(日本)→緊急停車時にイヴァンに縛られロシアに引き渡される形で下車(9話)

3号車、レジナルド・ヒューズ(アメリカ)、イヴァン・アニキエフ(ロシア)、ミキタ・タケシ(日本)、トッド・トバイアス(イングランド) 元9号車組

4号車、砂鉄(月氏)、ユースタス・ユーハン・ユレンシェーナ(聖マセッティ騎士団)、アルベルト・サヴォイア(ロヴェレート王国) 元8号車組

5号車、無人

6号車、灘一陸佐(日本)

7号車、バドル・アッディーン(エジプト)→後に8号車に移動(8話)

8号車、殺された三人→バドルにより7号車に移動(8話)


しかし、物語が進めば進むほど、嬉野君さんの知識の深さが見えてきますね。ダンなんて、日本では知ってる人ほとんどいないのに、なんてマニアックな。私だって、授業で扱われなければ知らなかった。ウェルズの方も(推測が正しければですが)今日まで全く知りませんでした。

そして、言語学に関する知識も。母音がどうとか鼻濁音がどうとか、これまたマニアックな話が。もしや、言語学を学ばれたことがあるのでは、と思えてすらきます。正直、多分大多数の読者にとって割と重要ではない部分でしょうが、こういう細かい言語学的説明や設定が、ちょっと言語を齧ってる身としてはとても美味しいのです。

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