放送大学の教授が書いた考察文につられて、ついつい『ヴィンランド・サガ』に手を出してしまいました。
教授曰く「中世のヴァイキング時代を忠実に再現しつつ信仰の危機や暴力、搾取など現代に生きる人間も抱える様々な問題に取り組んでいる」作品。
確かに教授の言う通り、かなり忠実に中世世界が再現されていると思います。ちゃんと漫画らしく、誇張するところは誇張するけれど、時代を逸脱しすぎないように気を付けている感じがします。
何より、最初の1ページ目。白鳥が海の上を飛んでいくシーンなんですが、それを見てすごく心惹かれました。中世北欧の言葉で、海を「白鳥の道」と表現することがあるのですが、きっとそれを踏まえているのだろうと思います。(ちなみに船は「海の馬」、王は「金を与える者」とか言ったりします)
――幼い頃に父を殺されたトルフィンは、殺害者であるアシェラッドを殺すことによって仇討をすることを人生の目標としていた。自らアシェラッドの率いる兵団に所属しながらも、軍功をあげるたびに褒賞として「アシェラッドとの決闘」を要求し続ける。しかしアシェラッドの兵団は、やがてデンマーク王のイングランド攻略に巻き込まれていく――
ざっとこんな感じの粗筋でしょうか。
こんな粗筋だけでも、これでもかとヴァイキング要素を詰め込んだ話であることがわかると思います。殺された親族の仇討をする「血の復讐」の習慣や、あちこちの勢力に力を貸す「兵団」の存在。そしてもちろん、イングランド攻略という史実。
もうひとつ、この作品の特徴。登場する人物の多くが「ここではないどこか」を求めていること。それは、「ヴィンランド」というタイトルにも反映されています。「ヴィンランド」とは北米大陸のヴァイキング名ですが、同時に、トルフィンにとっては到達すべき「夢の大地」でもあります。作中の「ヴィンランド」は花の咲き乱れる豊かで平和な土地として想像され続け、「ここではないどこか」の代表格となっています。
作品の元となっているサガでは、トルフィンはこの後、ヴィンランドへの航海に出ることになっています。漫画ではどのように物語が進んでいくのか、楽しみです。
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