2.5.11

かつての王にして未来の王

M.K. Hume
Headline Review
発売日:2010-09-30


ようやく、読み終わりました。
全3巻のこのシリーズ、1,2巻があまりにも面白く、アーサーがあまりにも素敵で、彼の死に様が描かれることが決定している3巻は、長らく読む気になれず本棚で寝かせてありました。

 冷静に最終巻を振り返ってみると、1,2巻の勢いは失われた感があります。もちろん、アーサーが既に高齢だということもありますが、どうも聖杯伝説部分の織り込み方に、最後まで100%納得できるとは言い難いものがありました。あれでは、ちょっと無理があるのではないかなー、という思考が終始頭の隅でちらつき…。
 しかし、「アーサー王の最期」は、ちょっぴり無常感を漂わせつつの、とても良い終わりでありました。戦いのさなかで死を迎えることによって、伝説が創られ、「かつての王にして未来の王」たるアーサー像が生まれる、その過程が垣間見えます。
 さて、実際にアーサー王がいたのか、という話になりますと、5,6世紀、押し寄せるサクソン人を一時的にとどめるほどの実力を持つ王あるいは将軍がいた、らしい、ということがわかっています。その王ないしは将軍こそがアーサーの原型である、というのが今の研究成果のようです。ずっと「アーサー王なんてロビンフッド並みに虚実だろ」と思っていた人間としては、びっくりだ、と言うしかないですが…。
 以前1,2巻を紹介したときにも書いたと思いますが、このシリーズはそんな「アーサー王」の原型、5,6世紀のケルト人の王としてのアーサー(筆者の与えた名前はアートレックス)を描いたものです。史実と幻想が混じるブリテン島の戦いの物語。興味を持たれた方は是非ご一読ください。(といいつつ、おそらくいないだろうなあもしいたらぜひお友達になってください!)

ちなみに、姉妹編としてこんなシリーズも始まっているようです。

今度は、アーサー王の右腕であり医術師でもある、マーリン(ミュリディオン・マーリヌス)の生涯の物語。といっても後半生は大体アーサー3巻と被ってくるのでどこまで何が描かれるかは不明ですが…。
アーサー王シリーズが人気が出たからじゃあ次はマーリンだ!という安易な雰囲気が感じられないでもないですが、何分引き込みが強力な物語を書く人ですので、個人的には読むのを楽しみにしています。




追記:
金星特急4巻、6月に出るんですね!何だかんだ言って雑誌で追っちゃってますが、書きおろしが誰視点になるのか、どんな話なのか楽しみです。それに、公式金星マップが載るとのことなのでそれも楽しみ。

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