27.6.11

乙嫁3

読みました。


この巻は、一番好きな回かもしれない。
もともと、何と言うか、「リアリティ」には欠ける作風だと感じていたので、「中央アジアをモチーフにしたファンタジー」という位置づけで読み続けていた漫画でしたが、今回は、ちょっと違うかもと思いました。
あ、ファンタジー云々というのは、要するに(当たり前のことですが)日本人目線の物語だな、ということで、けなそうとしている訳では全くありません(むしろファンタジーは大好物)。
スミスさんのエピソード、考え方の根本からの違い、それゆえに起こり得るすれ違いが、綺麗に丁寧に描かれていました。思わず、「酷い」と思ってしまったのは、現代人ならではの感情で、もし明治に生きた人に読んでもらったならば全く違う感想を持つ可能性もあるのかな。こういう場面を漫画で描ける人がいることは、凄いことだと思う。

26.6.11

テラビシアにかける橋

ガボア・クスポ
ポニーキャニオン
発売日:2010-03-17


観ました。
レンタルショップで、たまたま目にとまって、借りました。

良かったです。良い映画でした。
ストーリーもそうですが、何より演出の仕方が、たまらなく好きでした。
ああいう遊び、よくやったよなあ、と。
特に懐古するのが好きな訳でも、子ども時代=黄金時代 などと言う気もありませんけれど、あれはものすごく楽しい時間だったなあ、と。
正直に言うと今もよくやってるけれど、友達と堂々と出来たのはあの歳くらいまで。


最初にディ○ニープレゼンツと出たのを見て、うわあはずしたかも!とつい思いましたが、久しぶりの大当たりでした。

ところでヒロインの子、どこかで見たと思ったらチャーリーとチョコレート工場のあの子だったんですね。
そして、私が昔読んで結構感動した「ソウル・サーファー」の主演もやっている…日本公開未定だけれども。


色々語りたいけれども、語ると魅力が減じる類の映画な気がするので、これでおしまい。

23.6.11

続・金星4巻

また飽き足らずにつらつらつらと書いています。9話の話も込で。ネタばれます。




この間授業で扱われた「くぐり戸」というH. G. Wellsによる短編に、金星の庭のモチーフになったような庭園が登場してるのを発見してしまいました。
この物語では主人公が5歳ごろに見つけた、とある扉の向こうの世界に魅せられる、というのが大筋なのですが、この扉の向こうにある庭園が、彗星やマリアたちが連れてこられた庭に少し似ているのです。

・花の生い茂る、手入れのされた「庭」のようであること(舗装された道あり)
・人に慣れた豹がいること
・女の子が現れること(ウェルズ:髪の長い、美しくてもしかすると金髪かもしれない少女→"fair"という言葉が使われている)
・噴水があること

まあ、共通点と言ってもこれくらいなのですが、何となく似てるような気がしてきはしないでしょうか。
偶然の一致とは、言えないような。
以前私が厚かましくも「ジョン・ダン氏ってあの詩人からとってますか」とお聞きしたところ「イエス」と答えて下さったこともあるので、これもひょっとすると…。



以下、気になる点。

・夏草の過去。
確か、「俺には帰る国はない」と言っていた、と誰かが回想していたと思います。そして、アルベルトは、「日本人ではないのかもしれない」と考えている。そして他の月氏メンバーと違い、「人一倍、心に澱を降り積もらせていくタイプ」に見えるという錆丸の意見。
日本人でなくて漢字が読めるとしたら、中国、韓国、ベトナム辺りでしょうか。ベトナムなら、フランスに併合されてるだろうからある意味「帰る国が無い」?でもどこかの国のバベルの一族/少数民族なのかなーとも。バベルの一族抹殺依頼に、強固に反対していたらしいですし。あとグラナダって日本の漢字無いですよね、多分。


・黒曜が辞めたってことは、砂鉄が繰り上がり一鎖になるってことなのかどうか。
もしや実質的に一鎖?


・灘陸佐が持ってこようとした情報とは、何だったのか。
バドル移動の話をするためだけに来たのではないはず…。○P的な何かで退場されてしまいましたが…。


・相変わらず正体不明の金星。
金星と言うと、もう荒川の橋の下の彼女しか思いつかなくて、そんな電波な感じの少女しか想像できないんですが…絶対違うでしょうね。
金星の「花婿」って、普通に夫って意味なんだろか、と、今更ながら思いました。それを言ってしまったら「この世の栄華」って具体的に何よ、というのも問題ですが。美しい踊り子とか宴とか、全部あのポスターを見た人の妄想ですものね!


・花婿候補の行く末について。
砂鉄は「花婿に選ばれるのはたった一人、二人とも生き残ることはあり得ない」なんて言ってますが、考えてみればアッディーン双子の片割れの弟の方、特急に乗って失踪した2年前からずっと生きてるんですよね。緑の多い場所で、金星に恋をしている、という夢をヤスミンが見ていて、それだからこそヤスミンも金星に嫉妬せずにはいられなかった訳ですし。
そう考えると、樹になった人たちはともかく、「消された」人たちはどうなったのでしょうね。その存在が本当に抹消されたのか、はたまた摩訶不思議パワーで瞬間移動なんかさせてるのか(そんな甘い…)



事実関係整理

月長石に殺された3人、単行本で名前が抹消されてましたね。
可哀想なので、メモしておきます。
レイフ・オールマルクス、32歳
クリストフ・チャン、29歳
ホセ・サムディオ、37歳
いずれも軍人。


さらに、それぞれ生存者の国籍が単行本に追加されていましたね。

・金星特急内の様子を整理。65ページよりところどころ追加しつつ抜粋。


先頭車両、機関部:黒バベルと白バベル(国籍不明)

2号車、月長石ことセトウチ・ヨウ(日本)→緊急停車時にイヴァンに縛られロシアに引き渡される形で下車(9話)

3号車、レジナルド・ヒューズ(アメリカ)、イヴァン・アニキエフ(ロシア)、ミキタ・タケシ(日本)、トッド・トバイアス(イングランド) 元9号車組

4号車、砂鉄(月氏)、ユースタス・ユーハン・ユレンシェーナ(聖マセッティ騎士団)、アルベルト・サヴォイア(ロヴェレート王国) 元8号車組

5号車、無人

6号車、灘一陸佐(日本)

7号車、バドル・アッディーン(エジプト)→後に8号車に移動(8話)

8号車、殺された三人→バドルにより7号車に移動(8話)


しかし、物語が進めば進むほど、嬉野君さんの知識の深さが見えてきますね。ダンなんて、日本では知ってる人ほとんどいないのに、なんてマニアックな。私だって、授業で扱われなければ知らなかった。ウェルズの方も(推測が正しければですが)今日まで全く知りませんでした。

そして、言語学に関する知識も。母音がどうとか鼻濁音がどうとか、これまたマニアックな話が。もしや、言語学を学ばれたことがあるのでは、と思えてすらきます。正直、多分大多数の読者にとって割と重要ではない部分でしょうが、こういう細かい言語学的説明や設定が、ちょっと言語を齧ってる身としてはとても美味しいのです。

15.6.11

書くことと語ること

金星特急を叫んだあとで、全く毛色の違うものを遠慮なく取り上げてみようと思います。
3つ、連続で語学に関する(かどうかは微妙な)本を読みました。

1冊目のは、世界の文字と言葉の代表的なものを取り上げて紹介した、言葉の図鑑のようなものです。
1言語につき見開き2ページという量なので、情報量が的度でわかりやすいと思います。文字の見本写真がたくさん組み込まれているのも、見ていて楽しい。文字の体系別にざっくりとした説明があり、それからそれぞれの言語を各専門家が解説していくという形です。
中にはネタ的な写真やらを仕込んでくれる書き手もいて、面白いです。
個人的に嗤ったのが、ハンガリー語の

Megörült
Megőrült

前者は「彼は喜んだ」、
後者は「彼は気が狂った」
だそうです。
これ、手書きのときは日本語の「ソ」と「ン」のように、とてもきわどくなりそうですよね!
ちなみに、残りの2冊の著者である黒田龍之助さんも「ロシア語:キリル文字」の項に記事を寄せられています。
いやしかし、世の中には色んな字がありますね!
その中でも漢字って、かなり特殊なんだな、と実感しました。


下の2冊は、前述の黒田龍之助さんの著書です。
名前は前から知っていたのですが、読んだことはありませんでした。
ひょんなことから『その他の~』の方の存在を知り、「役に立たない」「その他の」という言葉につられて手に取りました。で、図書館でその隣に並んでいたのがその次の本。

両方とも、面白かったです。
確かにご本人も申告しているように、黒田さんは少し「ずれた」方だということがひしひしと伝わってきます 笑。
言葉について考えたこと、知っていること、語りたいこと。両作とも、そんな事柄が詰まっていました。

11.6.11

金星特急4巻 感想

敢えて書く必要もないかもしれませんが、いつも通り元気よくネタバレしますのでご注意を。




もう、何から始めればいいのやら!!

大体の感想は、雑誌の方で書いているので、とりあえず書き下ろし「チョコレートⅠ」から。
三月・無名・砂鉄×10歳という、大変美味しいお話でしたね!ご馳走様です。


三月
もしかしたらーと思ってましたが、やはりでしたね。
彼の出身は恐らく現ルーマニア辺りでしょう。近隣の村の少年、ミハイの食べたがっていた料理、バルモシュがそこらへんの食べ物のようです。
そして、強い強い!恐らく書き下ろし三人の中で、10歳時点で一番強いのは彼でしょうね。そこから追い上げるのだから、無名も砂鉄もすごいですけれども。そして、強烈な甘党である理由も同時に判明。大人が食べる黒いもの、自分が食べることができなかったものが、チョコレートだったと。
三月らが巻き込まれていた紛争は、ワラキア・モルドヴァ・トランシルヴァニアの三国の、オスマン帝国からの独立運動にあたるものかと想像します。ルーマニアの歴史は本当に紛争が多いので、あまり自信はありませんが、大体今から200年前に起きたものがそれです。


無名
彼もまた、寂しい過去を背負ってますね。一番「普通」というか安定した性格に見えるのは、彼が月氏に入ったのが結局、黒曜の後を追ってのことで、生き残るためとか誰かを守るためとかの理由では無いからかも。
しかしお祖父さんの「狼を狩る側になれ」との言葉って、月氏の「狼しかいらない」を踏まえているとしたら、それは「月氏を超えろ」というメッセージなのでしょうね。狭い世界にとらわれず、広く視界を保て、と。
そして書き下ろし3人の中で唯一、月氏入国前から名前があったのですね。カナート、という名、どういう意味なのでしょうか。ぱっと調べたところ、イランでは地下用水路の名称のようですが、多分違うでしょうね 笑
ところで彼、本編で雷鳥様と移動中、「彗星が戻ってくるまで」「彼女が無事に戻ってきたら」とか考えてますが、それは砂鉄を信用してのことなんでしょうか。あんなに惚れてるんなら、自分で助けに行こうとは思わなかったんだろか。
黒曜が彼の存在を顧みなかったのも、何か事情があるんだろうか、と、読んでいて思いました。
しかし、お母さんが結局は旦那と上手くいってるっぽいところが、唯一の救いかも。「10人兄弟」ってことは、そういうことだと理解していいんですよ、ね?


砂鉄
名前が、なかったのですね。
「男の子」「女の子」と日本語でいうと違和感がありますが、たとえば英語ではそれほど変な呼び方ではないので、世界語もそういう言葉なのやも。しかし、砂鉄と彗星だけは月氏の呼び名であり本名なのですね。
そういえば、「眼窩」って何でその呼び名なのでしょうか…。東洋人であることは間違いなさそうですが。
それにしてもあの妹に対する溺愛っぷりは、実に堂に入ったものですね!「弟」をつくってやったり、髪を洗って梳いてやったり。命の危険も顧みずに、さらわれそうになった彗星を助けようとしたり。彗星の方も負けずに、兄の真似をして武道訓練を自主的に始めてしまったり。妹も妹なら、兄も兄。
砂鉄が戦う術を身につけようと思ったのも、彗星を守りたいがため。そう考えると、彗星が失踪した時はさぞかし悔しかったでしょう。
10歳の砂鉄の口調がものすごく可愛らしいことに、違和感を感じました。が、よく考えてみれば、砂鉄はあの歳まで多分、ほとんどお母さんと妹としか話していなかったでしょう。父親はあまり帰って来ないまま死んでしまったし、お母さんの使う言葉を同じように使っていたのだろうな。
しかし、「妹を守れるようになる訓練を必要とするか」とか聞いておきながら、何故黒曜は砂鉄が彗星を追うのを止めようとしたのでしょうね。砂鉄をも失いたくなかったか、より深い事情があるのか。より深い事情、の可能性の方が濃厚そうですが。


金星も叶わぬ恋を、の件について。
ちょっと思ったんですが、もし金星が本当に女神のような存在だった場合、彼女は不死身で錆丸はそうじゃない、みたいなものかなー、と。いや、そんな単純なことではない?

暁玲について。
「私が彼に釣り合う年齢でしたら、確実に恋していましたわ」(p110)←彼女が何歳かは分からないけれど、20代ですよね?それなら、かなり錆丸と「釣り合う年齢」かと…。もしや彼女も恋愛沙汰に参戦ごほごほ

ところで、彗星が送ってくる蜥蜴と刀の鐔の文様が伝えたいことって、「錆丸を連れて来い」ってことじゃないかな、と。彼を捜し出す、唯一の手掛かりでしょうから。



後書きもまた大変美味しい感じでしたね。私のずうずうしい質問を取り上げて下さっていて嬉しかったです。どれとは言いませんが。
5巻での書き下ろしは「チョコレートⅡ」で、アルベルト・ユースタス・夏草の過去というこれまた美味しそうなお話になるとのこと。今から楽しみ…なのですが、発売日に確実に読めないので今からがっかりしています。

金星マップ、公式に出たのをみたらルートが大分違ったので、修正しました。いつのまにか5000ビュー越えててびっくりしました。需要あるんですねー。

9.6.11

グリーン・ノウの子どもたち

金星特急4巻、まだ手に入れられてません。まあ、手に入れたとして、今読む暇があるかというとこれまた微妙ですけれども。多分、読むのは土日以降になっちゃうんだろうなあ。

ところでグリーン・ノウシリーズって一応、怪奇現象系の話だったんでしょうか。
といきなり申しますのは、先日グリーン・ノウのドラマなるものを発見して観ることができたからです。

オープニングが、まず、ホラーっぽいんですよ。めちゃくちゃ暗い画面に、揺り木馬がぼうっと浮かび上がっていて。「ファンタジー」って雰囲気じゃないような気が…。

全体的に、とにかく画面が暗いです。そして、86年に制作されたとは思えないようなクラシック感で溢れているんですが、これは意図したものなのかどうなのか。

そして、仕立てが完全に怪奇現象もの。確かに、誰もいないはずの場所から笛の音が聞こえてきたり、笑い声が聞こえたりって、よく考えてみれば怪奇現象ですけども。あの子たちは幽霊で合って幽霊でないところが好きだったのになあ、とも思います。
まだほとんど観られていませんが、冒頭部分の印象を書きたかったのでとりあえず。




4.6.11

ヴィンランド、もしくは桃源郷

放送大学の教授が書いた考察文につられて、ついつい『ヴィンランド・サガ』に手を出してしまいました。

教授曰く「中世のヴァイキング時代を忠実に再現しつつ信仰の危機や暴力、搾取など現代に生きる人間も抱える様々な問題に取り組んでいる」作品。

確かに教授の言う通り、かなり忠実に中世世界が再現されていると思います。ちゃんと漫画らしく、誇張するところは誇張するけれど、時代を逸脱しすぎないように気を付けている感じがします。
何より、最初の1ページ目。白鳥が海の上を飛んでいくシーンなんですが、それを見てすごく心惹かれました。中世北欧の言葉で、海を「白鳥の道」と表現することがあるのですが、きっとそれを踏まえているのだろうと思います。(ちなみに船は「海の馬」、王は「金を与える者」とか言ったりします)

 ――幼い頃に父を殺されたトルフィンは、殺害者であるアシェラッドを殺すことによって仇討をすることを人生の目標としていた。自らアシェラッドの率いる兵団に所属しながらも、軍功をあげるたびに褒賞として「アシェラッドとの決闘」を要求し続ける。しかしアシェラッドの兵団は、やがてデンマーク王のイングランド攻略に巻き込まれていく――

 ざっとこんな感じの粗筋でしょうか。
 こんな粗筋だけでも、これでもかとヴァイキング要素を詰め込んだ話であることがわかると思います。殺された親族の仇討をする「血の復讐」の習慣や、あちこちの勢力に力を貸す「兵団」の存在。そしてもちろん、イングランド攻略という史実。

 もうひとつ、この作品の特徴。登場する人物の多くが「ここではないどこか」を求めていること。それは、「ヴィンランド」というタイトルにも反映されています。「ヴィンランド」とは北米大陸のヴァイキング名ですが、同時に、トルフィンにとっては到達すべき「夢の大地」でもあります。作中の「ヴィンランド」は花の咲き乱れる豊かで平和な土地として想像され続け、「ここではないどこか」の代表格となっています。

 作品の元となっているサガでは、トルフィンはこの後、ヴィンランドへの航海に出ることになっています。漫画ではどのように物語が進んでいくのか、楽しみです。